花と獣 2  




※ずっとベッドの上です。
苦手な方はご注意ください。










セミダブルのベッドに優しく寝かされ、ゆっくりとシャツが捲り上げられる。真っ白な肌と、主張する2つの乳首にオルカはゆっくりと手を這わす。
「・・・や、あ!・・・ん」
肌を這うその微かな刺激でさえ、我慢出来ないような快感に変わる。すでに滑り気を帯びた膣も、吐息に合わせてくぱくぱと物欲しそうに口を開いていた。堪らず両腿を閉じて快感を逃がそうとするが、間に割って入ったオルカの片足がそれを邪魔する。くい、と膝を持ち上げられ下腹部が圧迫されると、きゅうんと抗えない快感が押し寄せる。

「う、・・・・・・も、や、シャ、チョー・・・あっ」

真っ白な肌の赤い頂点に、オルカの黒い指が触れる。潰したり捏ねたり側面を擦ったり。オルカの指先の動き一つで、は全身で震って絶え間なく甘い声を漏らす。

何の前準備もいらない身体であったのに、オルカは丁寧にに愛撫を施していく。鋭い歯の間から伸ばされた舌で乳首をれろりと舐められると、それだけで目の前がちかちかした。

「は、ん、や、イっちゃ、いっ……っ!」

咄嗟にオルカの頭を抱き込むと、下腹部を大きく震わせては絶頂に至った。乳房に押し付けられるように抱き込まれたオルカは、目の前の赤い実を舐りながら右手をの下腹部へと伸ばす。ショートパンツの中に潜ると、たっぷり湿ったショーツの上から膣口を押す。くぱくぱと指さえも飲み込もうとする無意識な動きと同時にとろりと粘液が零れてショーツ越しにオルカの手を伝う。ショーツの横から潜ってきたオルカの指が、優しく陰核を刺激し始めた。大きくて武骨なオルカの手なのに、繊細な動きでを翻弄する。指の腹でするすると側面を擦られるだけで、絶頂の波が湧き上がるのが分かる。「ゃ、ゃめ、あっあっ」うわ言のように鳴き続けるの声が、次第に大きくなっていく。

「イッたばっか、で、シャ、チョー、も、わたし、また・・・!!あ、あ、」

両足を折り曲げながら、またもは絶頂に呑まれる。その間も刺激をやめないオルカの腕を頼りなく抑えながら「待っ、て、もう、死ん、じゃう、わた、し」と縋るが、オルカはの涙を舐めとるだけでやめようとはしなかった。


▲▼


もう何度達したのか分からない。

「―――っ、ああ、あ、あ!」

ぴちゃぴちゃとえっちな水音と、膣口に入るオルカの指の動きに高められ、はまた身体を大きく震わせた。余韻でぴくぴくと波打つ膣から2本同時に指を引き抜くと、オルカはベルトのバックルに手をかけた。カチャカチャという金属音に気づいたが視線を向けると、ボクサーパンツ1枚になったオルカと目が合う。引き締まった体に目が奪われ、きゅうんとまた疼く。

「・・・・・・いいか」
「シャ、チョー・・・おねが、い、きて・・・」

無けなしの理性が働き、枕元に置いていた箱の中から手探りでコンドームを探り出し、オルカへと手渡した。それを見て一瞬目を細めたかと思うと何故か後ろに向かって放り投げた。

「え?」

流石に避妊はして欲しい、とが訴える前にがさごそと自分の荷物の中からコンドームを取り出してさっと装着する。なんで持ってるの?と疑問が湧くが、そんな些細なことはすぐに思考の端に追いやられた。

オルカの肉棒がに当てられる。わざと陰核を擦りながら膣口を探るその動きに翻弄され、「ひ、う、ああ」とだらしなく艷声が零れる。

ぬぷり、と亀頭の先が少しずつ潜っていく。
膣壁を蹂躙するその質量は、の脳味噌から思考力を完全に奪った。ぢゅぷううううと呆気なくオルカを最奥まで飲み込んだは、経験したことのない圧迫感に声も出ない。

「……〜〜〜〜っ!」
・・・!」

ゆっくりと抽送を始めたオルカに、はすがりつくように手を伸ばした。首筋に両手をかけて自分の方へ引き寄せる。甘えるように身体を寄せ、「あっ、あっ、や、ん、きもち、い」と焦点の合わない瞳で甘い声を垂れ流す。ふわりと香るオルカの男らしい匂いにすら興奮してぞくりとした。

「―――っ、ああ、あ、あ!」

今までで1番大きな波に呑まれて、はわけも分からず叫んだ。

・・・っ・・・」

押し殺したような声で唸ったオルカは、次の瞬間で大きく腰をグラインドさせた。抽送の速度が上がり、達したばかりで敏感になっているはあっという間に高みへと運ばれていく。

「ぁう、も、や、ああっ!」
・・・・・・・・・っ、好きだ・・・・・・!」
最奥を突かれて、視界が白くなる。オルカの低い声が届かぬまま、は意識を手放した。


▲▼


「う・・・・・・ん、?」

右にも左にも動けない圧迫感を感じて目を覚ますと、カーテンの隙間からはほんのりと朝日が差し込んでいた。 目覚ましなしで目を覚ましたのは何ヶ月ぶりだろうか。目の前の真っ白な壁に朝日が反射して、余計に眩しく感じる。 寝相は良い方なので、ベットの片方に寄って眠ることは珍しかった。だから寝苦しかったんだ、体の向きを変えようと手をついたところで、枕の下に黒い手が伸ばされていることに気づく。

「・・・・・・」

ああ待って、これは・・・。断片的に頭を巡る昨夜の記憶を並び替えながら、おそるおそる寝返りをうった。

セミダブルのベッドに窮屈そうに眠るのは、上司であるギャングオルカ。すうすうと顔に似合わぬ可愛い寝息に「ふふ」と笑が零れるが、そんな余裕もすぐに消え失せた。ベッドサイドに脱ぎ捨てられたお互いの着衣を見て、ちりちりと痛む下腹部を感じて、昨晩の痴態が鮮明に思い出された。
隣で眠るシャチョーが目を覚ました時、どんな反応をするだろう。尊敬する上司を誘惑してベッドを共にしてしまった。こんな醜態を晒す部下は要らない、と拒絶されてしまうだろうか。事務所を辞めろ、と突き放されるだろうか。楽しかった。居心地が良かった。強面だけど優しいシャチョーが好きだったし、キティキティと構ってくれるサイドキックのみんなも好きだった。

なんで我慢出来なかったんだろう。
昨晩の痴態を悔いて涙が溢れた。声を出すまいと唇を噛み締めるが、嗚咽とともに身体が震えてしまい、「・・・?」と少し眠そうなシャチョーの声が聞こえてくる。起こしてしまったみたい。ふるふると顔を振り、ブランケットに顔を埋め、決してシャチョーを見ないようにする。どんな顔を向ければ良いかも分からないし、泣き顔を見られたくなかったし、何より合わせる顔がない。

「泣いてるのか」
シャチョーは優しくわたしの頭を撫でた。頑なだったわたしは、その優しい声にすぐに絆された。ブランケットから顔を出しおずおずと謝罪の言葉を口にする。

「・・・シャチョー、昨日は、ごめんなさい・・・」

どんな言葉でも甘んじて受け入れる。そんな決意だったのに、シャチョーは何も言わない。わたしの脇の下に手が伸びてきて、無理矢理にベッドに座らされた。オルカさんも体勢を整えたので、わたしたち2人はベッドの上で向かい合うことになる。

・・・昨日はすまなかったな」
「・・・シャチョー、わたしにあてられただけでしょう・・・謝らないで・・・」

瞬きしなくとも瞳からは涙が溢れた。今後のことを話さないといけないのに、怖くて自分から切り出すことはできなかった。

「今まで発情期はどう過ごしていた」
「・・・シャチョーが来た時みたいに、猫型でひたすら耐えてました」
「そうか。では、これは?」

シャチョーが取り出したのは、枕元に置かれているコンドームだった。驚きで涙が途切れ、口を開けて呆けてしまった。疼きから解放されて完全に通常営業のわたしには刺激が強く、慌てて取り上げて再び缶の中へ戻す。そういえば昨日、シャチョーに渡したんだっけ。

「・・・いつかの・・・・・・残り?」

実際には元彼の忘れ物だったが、直接的な表現は避けた。けれどこの回答は不正解だったようで、シャチョーは更に語気を強める。

「あの状態のとき、相手は誰でも良いのか」

なんだか今日のシャチョーはわたしの彼氏みたいだ。過去の不貞を暴かれているような気分になる。誰でもいいから助けてと思わなかったといえば嘘になるけど、実際に誰かの力を借りて乗り切ったことはない。

「発情期に、その、そういう流れになったのは、シャチョーだけ、です」

「・・・!そうか」

そう言うとシャチョーは黙り込んでしまった。冷静になってみると、今の状況はちょっとまずい。わたしは、ブランケットで身体を隠しているとはいえ全裸だし、シャチョーは鍛えられた肉体を恥ずかしがることなくさらけ出している。上も、下も。恥ずかしくないのかな・・・ブランケットをきつめに身体に巻き直し、余った部分をシャチョーの下半身にかけてあげた。
これからどうすれば?わたしの部屋だし、とりあえずシャワーを勧めてみる?

「あの、シャチョー。よかったらシャワーでも」

案内しますよ、さあ!と動くように促せば、難しい顔をしたシャチョーがわたしを抱き上げた。

「えっ!?」

ブランケットが落ちないよう咄嗟に抑えることで精一杯だったわたしは、されるがままにシャチョーの膝の上に降りた。
「シャ、シャチョー?まずいでしょ、これ」
、返事を聞かせてくれないか」

わたしの焦りなどお構い無しで、シャチョーはわたしの頬に手を添えて親指で優しく擦る。返事が必要なことを言われた覚えはないけど、わたしは初心でもなければ鈍感でもないので、なんとなくシャチョーが求めていることの予想がついた。

「返事って?」
けれど、敢えて自分からは何も言わない。

「昨日のことだ、覚えてないのか」
「シャチョーとエッチしたこと?」

普段の調子を取り戻したわたしのあけすけな表現にシャチョーが顔を顰める。

「違う、からかうな!私がに告げた言葉があるだろう!」
「言葉?・・・覚えてないので、もう一度言ってください」

自分でもびっくりするぐらい甘えた声色が出た。
どくん、どくん、と心臓がうるさい。珍しく狼狽えているシャチョーとしっかり目を合わせて、シャチョーの言葉を待つ。

「・・・つくづく思い通りにならない女だ」

突き放すような言葉でも、シャチョーの表情は柔らかい。

「・・・好きだ。昨晩の蛮行は許されるものではないが、その好意故に抑えが効かなかった」

きゅゅゅうん。
心臓が掴まれる心地がした。
余裕ぶって合わせていた視線を思い切り逸らして、俯むいた。自分から言わせておいて、照れて顔を見られなくなるってなんなの・・・!

「返事は」

強引に顔を上げられ、再びシャチョーと視線が合わさる。

「シャチョー、女の趣味悪いですね」
「そうだろうか」
「発情期のこと黙って入社したこと、怒ってないんですか?」
「強力な個性に弱点は付き物だろう」
「・・・ありがとう、シャチョー」

隠し事がなくなって、心の支えがとれたような心地だった。嬉しくなって「ふふっ」と笑みが零れた。そんなわたしから、シャチョーは目を離さない。ああそう、まだ、伝えてなかった、

「・・・わたしもシャチョーのこと、好き」

恥ずかしさから猫になったわたしを驚きもせずに抱き上げ、「そうか・・・!よかった・・・!」と言いながらぎゅっと抱き締めるものだから、わたしはごろごろとうるさいぐらいに鳴る喉の音を止めることができなかった。

「ニャオン」

シャチョーの目を見ながら、甘えるように一声鳴く。大好きだよ、の意味を込めて。


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